刀を3DCGで作りたいんだけどどうしたらうまくできるかな?
ファンタジーの世界観や歴史をテーマにしたゲーム、アニメなどが人気で、3DCGをする人の間でも作る機会のある人、または作ってみたいと思う人も増えているのではないかと思います。
日本刀はパッと見た感じシンプルな形状だと思う人もいるかもしれませんが柄や刃部分が独特な形状をしていて、その点を考えないと微妙な仕上がりになってしまいます。
そのためある程度でもいいので構造や形状を押さえておけばそれらしい形にモデリングすることができるでしょう。
この記事ではまず最初に日本刀の大まかな構造と部位名を説明し、その後以下の手順でモデリングする過程を解説していきます。
①デザイン画を用意
②シリンダーを編集して納刀された状態の刀をモデリングする
③刀身・鞘のモデリング
④下緒など、小物もモデリング
⑤刀身、鞘をまとめて曲げる
⑥ハイポリの柄巻きを作る
最初にまっずぐな状態の刀身と鞘をモデリングし、そこから刀身、鞘の両方をまとめて曲げたほうが効率がいいためこのような手順にします。
この方法なら違和感なく日本刀がモデリングできるようになります。
それでは行ってみましょう!
今回使うツール
モデリング Blender
テクスチャリング SubstancePainter
デザイン画作成 Clip Studio
モデリングで今回特に使う機能
ループカット Ctrl+R
ベベル(Ctrl+B)
ブーリアン
曲げ Shift+W
ラティス
刀のパーツについて
刀は分解するとかなり細かいパーツ数になり、また各パーツの中でも様々に名前がついています。
しかし3DCGでモデリングする場合はそれらのパーツが組まれた完成品を作ることがほとんどだと思います。
ですので外側に見える部分の名称を最低限押さえておけばモデリングはできるでしょう。
ここでは説明する際に必要な部位名を記載しておきます。
刀身部分
柄(柄) … 手で握る部分。金属でできている刀身に柄下地という木をはめ込み、鮫皮を巻いてさらにその上に組紐を菱形ができるように巻いて作られます。
柄頭(つかがしら) … 柄の先端に付けられた金具。柄を補強するためにある。柄巻きがほどけないようにする効果もあるらしい
目釘(めくぎ) … 柄から刀身が抜けないようにするための釘。竹や金属が多い
鍔(つば) … 主に刀で攻撃された際に手元を守るための金具。小柄や笄を通すための穴である小柄穴・笄穴が開いているものが多い。穴がないものもある。
切羽(せっぱ) … 鍔を表裏から挟み込んで固定させるための金具。
鎺(はばき) … 刃部分の根元に着けられた金具。鞘から刀が抜け落ちるのを防いだり、刀身が鞘に当たらないようにするためにとりつける
棟(むね) … 刃の反対側の部分。峰(みね)ともいう。時代劇の峰うちはこの部分を使う。
鎬(しのぎ) … 刃と棟の間にある、角なって線のようになっている部分。
刃文(はもん) … 日本刀を作る過程で行われる焼き入れの際に現れる文様
切先(きっさき) … 刃の先端部分。
鞘部分
鞘(さや) … 刀身を納めて保護する筒状の物。ベースは木製で、漆を塗っているものが多いらしい。竹や藤を巻いて補強したものもある。小柄や笄を通すための溝がついている。
鯉口(こいくち) … 鞘の口。鯉が口を開けているように見えることからその名前が付けられた。
栗形(くりがた) … 下緒を通すためのパーツ。
鞘尻(さやじり) … 鞘の先端。鐺(こじり)ともいう。 金物で補強してあるものもある。
デザイン画
構造を理解したら全体の形状も把握するためにデザイン画を用意します。
このイラストは画像資料をもとにClipstudioで制作しました。
日本刀のモデリング
ここまで、日本刀の基本構造と部位名を把握し、デザイン画も用意出来たらいよいよモデリング開始です。
先に紹介した中の①デザイン画は用意済ですので②以降の流れでモデリングしていきます。
②シリンダーを編集して納刀された状態の刀をモデリングする
③刀身・鞘のモデリング
④下緒など、小物もモデリング
⑤刀身、鞘をまとめて曲げる
⑥ハイポリの柄巻きを作る
最初に鞘に納められた状態でモデリングし、そのあと刀身部分を作っていきます。
この順番でモデリングしていくと最初に作った鞘の大きさから縮小、編集すればいいことになるため鞘の大きさよりも刀身の部分がはみ出ることがありません。
②シリンダーを編集して納刀された状態の刀をモデリングする
shift+Aでシリンダー(円柱)を用意します。
ここでは頂点数は16にしておきます。
ポリゴン数が多くなりすぎると感じる場合は頂点数を少なくしてもかまいません。
デザイン画と比較して大きさを調整していきましょう。
また刀の柄の部分が原点になるように位置を設定しておきましょう。
移動値を編集して配置し、Ctrl+Aで全トランスフォームを選択し、位置を固定します。
③刀身・鞘のモデリング
鍔を作ります。
①鍔のある当たりの面を一周選択し、押し出し(E)で面を出し、形を整えていきます。
②ベベル(Ctrl+B)でエッジを増やし、鍔に丸みを与えます。
③笄穴、小柄穴を作ります。ああを開けるために穴と同じ形状のオブジェクトを用意します。
④ブーリアンを適用して穴をあけます。
これまでモデリングした納刀された状態の刀を複製し、複製したほうの刀の柄、鍔の部分を削除します。
これが鞘になります。
そして複製元である納刀された状態の刀であったオブジェクトの、鞘であった部分をポリゴン編集して刃の形をモデリングします。
これでシンプルな形のハイポリ用の刀と鞘、ローポリ用の刀と鞘がそれぞれできました。
④下緒など、小物もモデリング
結んだ状態の下緒をモデリングします。
左:ベイク用のハイポリモデル
右:ローポリモデル
まっすぐな状態の刀(ハイポリ&ローポリ)ができました。
つづいて刀に反りを入れます。
⑤刀身、鞘をまとめて曲げる
ここから刀身と鞘に反りを入れます。
この工程ができると一気に日本刀らしくなります。
まず、下準備として、これまでにモデリングした以下の4点すべてを原点に集めておきます。
・ローポリの刀身
・ローポリの鞘
・ハイポリの刀身
・ハイポリの鞘
以上4点のオブジェクトの位置を揃えたら、デザイン画のほうも刀のオブジェクトのシルエットに重なるように移動させておきます。
上記4点のオブジェクトをすべて選択した状態で編集モードに切り替えます。
Shift+W でオブジェクトを曲げることができます。
鞘と刃の部分の面を選択し、湾曲させます。Shift+Wを押すと曲げるためのカーソル(赤丸内)が表示されるので、そのカーソルを移動させ適度なカーブを作りましょう。
刀の柄の位置を原点にしたのは 後にキャラクターの手に持たせる際に編集をしやすくするというのと、この湾曲の処理の際に意図した反り具合を作りやすくするためです。
これでローポリ用の刀と鞘、ハイポリ用の刀と鞘に反りが入りました。
ここまででだいぶ刀らしいシルエットになりましたがここからさらにデティールを加えてよりリアル度の高いものにしていきましょう。
⑥ハイポリの柄巻きを作る
ここから柄のデティールを加えていきます。
柄巻きは、日本刀の柄にある菱形の形状を作る巻き方をしていて、いかにも日本刀という印象を与えるポイントとなる部分です。
見栄えが良くなるように作りこんでいきましょう。
まず柄巻きの形を一つモデリングします。
その後そのひとつ目を複製・反転し、さらに複製して配置していきます。
刃側から見るとジグザグになっているように見ます。
表裏で対称形になっているわけではない点に注意しましょう。
柄は鍔に近い部分と柄頭で微妙に太さが異なります。
ラティスなどを使うと楽に調整できます。
ここまでできたらUVを設定して、可能であればテクスチャも作ってみましょう、
SubstancePainterでテクスチャリング
ここから先はSubstancePainterでのテクスチャリングになります。
まずSubstancePainterでローポリモデルを開きます。
ハイポリモデルでベイク処理をします。
平だった柄、何かのかたまりにしか見えなかった下緒がそれらしい形になりました。
刃、鍔部分、鞘、などの各パーツににそれぞれマテリアルを設定します。
刃の刃紋は手描きです。
Heightの数値を調整すると描画した部分にせり出したりしている効果を与えられますので鍔に植物のような模様を入れて和の雰囲気を出してみます。
鞘の表面に少しキズを入れると使い込んでいる雰囲気が出るかもしれません。
日本刀にテクスチャが設定されました。
応用編
細かいパーツを追加調整したり、テクスチャの色を変更したりすれば別パターンが作れます。
刀掛台もモデリングしてその上に配置します。
今回は織田信長が一時所有していたという「へし切長谷部」風にしてみました。
まとめ
今回の記事では以下の手順で日本刀をモデリングしてみました。
①デザイン画を用意
②シリンダーを編集して納刀された状態の刀をモデリングする
③刀身・鞘のモデリング
④下緒など、小物もモデリング
⑤刀身、鞘をまとめて曲げる
⑥ハイポリの柄巻きを作る
以上の手順でモデリングしていくとリアル度の高い日本刀が3DCGで作れます。
また一度モデリングすれば装飾用のパーツやテクスチャを調整するだけで別パターンの刀も作れるようになります。
いろいろな刀を作ってみましょう。